第10話 "旅立つ朝に"
【電話かけているエルー】
エル「コード4003
シスター・エルレインです
協会本部シスター・マーサに…」
電話「…コード承認しました
すぐにお繋ぎしますのでそのままお待ちを」
エル「はい ………」
エル(さっきからキリさんがまったく喋らない…
当然だよね…
あんなことがあった後だもの
ショックを受けない方がどうかしてる…
まだ責任…
感じてるのかな…)
エル「…キリさん」
キリの方を向くエルー
キリ「zzZ」
エル「ちょっ…!ちょっとキリさん大丈夫ですか!?」
キリ「ふぉ?」
エル「立ったまま寝てましたよ今!!
どうしたんですか急に(汗」
キリ「いや…だってさ…
昼間の奴にポコスカ殴られて体中痛いし…
結構疲れてたからさ…
とりあえずシスターのみんなの搬送も終わって
ホッとしてたら急に眠気がね」
エル「…なんか意外と普通なんですね…」
キリ「は?何が…?」
エル「……もっとこう 落ち込んでいるのかと…
私 結構心配したんですからね?」
キリ「…そりゃ ショックも受けたよ
ただ… ずっと落ち込んでるのは性に合ってないからな
今は他にやらなきゃいけない事があるだろ?
オレのために命はってくれた人がいるわけだし
ヘコんでなんかいらんないよ」
エル「……… キリさん…」
電話「なかなか素晴らしい考え方ね」
キリ「うおおっ」
エル「いつから聞いてたの!?」 ドキーン!!
電話「あなた達が病院に行ってる間に報告は聞いたわ
まずは…無事でいてくれてありがとう」
キリ「あのさ…黙って人の話聞くのやめなよね」
電話「状況はこの上なく悪いわね
これほど早く…キリ君の事が向こう側に知られるとは予想外だった
あなた達が遭ったルーシー・ガズゥという男…
11人のガゼルと呼ばれる ガゼル創立メンバーの一人…
ここまでは聞いたと思うけど
正直…あなた達が彼と直接対峙して
なお生きている事は幸運としか言えないわ」
キリ「…協会はどこまでガゼルの事を把握してるんだ?
知ってる事があるなら教えてくれ!」
電話「もちろんそのつもりよ
ただ… 私達も多くを知っている訳では無いの
沢山の犠牲を払っても…知り得た事はほんの一握り…
私達は過去に何度か…
ガゼルの暗殺者を捕らえた事がある
11人のガゼルの話は その際 得られた情報よ
でも… 彼らはそこまでしか知らなかった
捕らえた暗殺者達はあくまで金で殺しを請け負っていただけで
ガゼルの目的などについては 何も知らされていない
知っていたのは トップに立つ人間の数…
そして… ルーシー・ゼズゥという男の名
暗殺者たちを雇うのも 指示を出すのも…
ほとんど彼が一人でやっているようよ
トップの11人の中で唯一 顔と名前が分かる人物
顔が分かったのは ごく最近の話だけどね
捕らえた暗殺者から 特徴を聞いて似顔絵を作れたの
…私たちが 100年もかかって分かった事は…たったこれだけよ」
キリ「は…!?100年!?
おいおい ガゼルっていつからあるんだよ
ゼズゥって奴それの"創立メンバー"なんだろ?あれ100才!?」
電話「…まぁまぁ 混乱するのも無理ないけど よく聞いて
私達のシスター協会…これがおよそ200年前に発足したもの
でも…今の様に世間に浸透するまでには100年近くの永い時間が必要だった
ガゼルが暗躍を始めたのはその時期からよ
そして現在に至るまで その影響力は増し続けてる
ルーシー・ゼズゥという名前だけはもう その頃からこちらに聞こえていたの
私達の推論はこう
"11人のガゼル"というのは 後任の人間が名前を受け継いでいくんじゃないかしら
他の10人にも それぞれ名前があって 今のゼズゥはそうして今の地位にいるんじゃない?
…これなら"創立メンバー"と呼ばれるのも頷けるでしょ?」
キリ「…まぁ 確かに
…じゃあ結局 ガゼルの目的って分からないんだな
あいつの言ってた「計画」…
「トロイを治療されると困る」
「計画の邪魔になるからシスターを殺す」
引っかかるのは「トロイの感染しない人間は優先して消す」…
そこまで言っておいて あいつはオレを見逃した
あいつまるで オレの力…スレアの事を知ってるみたいだった
オレ以外にも こんな力を持った奴がおるって事か?」
エル「引っかかるといえば あいつは…
キリさんを一見見ただけで 感染してるのか見破った
あれは本来シスターにしか出来ないはずなんです
それなのに…」
キリ「…それから推測できることはこうだな…
ガゼルは…オレ達や協会さえ知らないトロイの"何か"を知ってるかもしれない
シスターにしか出来ないハズの事をしてみせ…
トロイの抑えるオレの力を知っていた …ってことはさ
オレのこの"フレア"
こいつも もしかしたらトロイと何か 関係があるのかもしれないな
あいつはそれを知ってたから…
オレを見逃したのかも…
ま 可能性だよあくまで
協会本部に行って オレの体を調べたら それも分かるかもな
それでさ… オレ達話し合って決めたんだけど…
えと… マーサさん?」
マーサ「? 何?」
キリ「オレ達はもう…
この町(ターム)から出て行こうと思う」
マーサ「…そうね 私もそれがいいと思うわ…」
エル「これから私達は ガゼルの人間にマークされることになります
このまま この町に居れば無関係の人まで巻き込んでしまう
巻き込みたくない… 大切な人達のことも…」
マーサ「…ファルゼン部隊との合流地を変更しましょう
賢明な判断だと思う
協会にいたシスター達の事は心配しないで 上手くやっておくから
合流地点はおいおい決めるとして…
あなた達からも こちらに向かって動いてもらうわ
まずは"デオドラド"という街へ向かってくれる?
少しアテがあるの」
キリ「"デオドラド"? 隣町の?」
マーサ「そこに"ファラン・デンセル"という男がいるハズだから 訪ねてみて欲しいの
もしかしたら 味方になってくれるかもしれない」
エル「どういう方なんですか?」
マーサ「ん―――・・ 部外者ではあるんだけど
彼とは少し面識もあるし 他に頼れそうな人もいないから
まぁ多分無理なんだけどね…?
あの人 無口で気難しいし 護衛とか苦手そうだし
私の名前も出していいから お金に糸目をつけずに交渉してみてよ
多分無理だけど」
キリ「…おいおい
まぁでも 今 他に手が無いんだろ?
だったら行くしかないさ すぐ準備しよう
その町なら知り合いもいるし すぐ見つかると思う
朝の馬車に乗れば4~5時間で着く距離だ」
マーサ「キリ君…!
…どうか 死なないで…」
キリ「……… おうっ!」
【場面変わってキリ邸】
頭を下げているエルー
エル「…本当に申し訳ありません…!
安全は保障するなんて言っておいて こんなことになってしまって…」
母「…それを どうしてあなたが謝るの?
エルーちゃんは何も悪くないじゃないの
私達は平気だから頭を上げてよ」
エル「え… でも…」
エルー頭を上げて
エル「…… うそ…! 平気なわけないですよ!
聞きましたよね?現に今日だって本当…!
危ない所だったんです…!!
私…もしもキリさんに何かあったら」
母「大丈夫よ!!
私は全然心配なんかしてない!
この子なら死なないから!!
うちの子は見た目より丈夫に出来てるから
あなたは心配しなくていいの!
それより私はエルーちゃんの方が心配だわ!」
エル「や… あの…」
母「キリ!あんた男の子なんだから ちゃんと守ってあげなさいよ?
あんたはケガしてもいいけどさ」
キリ「それはどうなの? 親として…」
母「よーし!こうなったら今夜はお見送り会よ!!
腕によりをかけて おいしい料理作るからね~ パパが!!
ほら手ぇ洗ってらっしゃい!!」
エル「あの…! ちょっと…!」
母「短い間になっちゃったけど今夜はパーッとやりましょう」
エル「………」
キリ「気にしすぎなんだよ あんたは」
エル「えっ」
キリ「それともいっそ
思いっきり責められた方が楽だった?
…うちの親の強がりはいいとして ここにあんたの事責めてる奴なんていないよ」
エル「そう ですね
なんだか… わかってた様な気がします…」
楽しそうに料理をしている母と父
豪勢な食事
楽しそうな食卓
笑っているエルー
そして、部屋に戻るキリとエルー
優しい表情で見送る母 そして父
まるで
まるで何も
特別な事など
無いかのように
君は
この夜を
過ごした
寝てる間に何者かの足がキリ邸へ
朝になりました
キリ「おお――…
晴れたなぁ――…」
エル「…荷物それだけですか?」
キリ「ああ 身軽でいいだろ?」
エル「あの… ちゃんと分かってますよね?
この旅は とっても危険で重要な旅なんですが…」
キリ「…だからこそさ 逃げるなら軽い方がいい」
エル「ところで思うんですけど…
スイさん誘わないんですね
てっきり声かけるのかと思ってました」
キリ「へ? ああ… あいつはダメだよやっかい過ぎるもん
オレもチラッと考えたけど やっぱダメだ
あいつには声もかけずに行くつもりだよ
言ったらあいつ絶対ついて来…」
正面にスイ
キリ「スイ!?お前なんでいるんだよ!?」
スイ「なんでじゃねぇよ キリ~ 話は聞いたぜぇ~?
こういう時は呼べって言ってただろーが
お前昨日すげぇ化け物と闘りあったんだって?
しかもまだそいつ お前の事狙ってるんだろ?
ならお前の側にいりゃ…
あたし そいつと闘れるかもしんないじゃん?」
キリ「それで 連れてけってか」
スイ「それ違う 連れて行かせてあげるんだ!
もともと あたしも街から出ていくつもりだったからさ
こんな良い舟なんてないだろ?」
キリ「まあ一丁よろしく頼むわ」
エル(んー巻き込みたくないけど…
スイさんの力は頼りにな…)
エルー、スイのかばんにまんぱんに入っているチェリー缶を見て
エルー(……… 不安になってきた(汗)
母がやってきて
母「キリー! 忘れ物とか… おっ…!
おはよースイちゃん!ホントに一緒に行っちゃうの?」
スイ「おっす!おばちゃん!おじちゃん!そりゃ行くよ
昨日はゴメンな真夜中に押しかけちゃって!
色々教えてくれてありがとう」
キリ(母ちゃん 余計な事を…!)
エル(あ…
ミンクさん目にくまがある…
眠れなかったんだ…)
母「お祭りの事は街の人に上手く言っとくから おみやげ忘れないように!!」
キリ「…オレ 大して危険な旅じゃない気がしてきた」
母「………
キリ! お祭りの日には帰ってくんのよ?
あんたの大切な日 忘れちゃだめよ?」
キリ、背を向けて手を上げて
キリ「………
………
ん!」
私は未だに
この日の事を
思い出すと
少しだけ
胸が躍る
スイ「… おばちゃんずっと寝てなかったみたいだな」
エル「あ… やっぱりですか?」
スイ「そういや昨日 ずっと明かりついてたよ…」
危険な旅だと
分かってるのに
私はこの時
少しワクワク
していた
スイ「キリ遅せーよ 早く~!」
キリ「うるさいな 子供かよ…」
そして…
この時の事を
思い出して
笑ってしまうんだ
母「キリー!!エルーちゃーん!!」
3人振り返って
3人「?」
エル「………
………
だっ…!!」
キリ「ぶはっ!!」
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いってらっしゃい!!

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二股はダメよ!!

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ヽ(`・ω・´)ノ
この先どこで
何があっても
スイ「何何 お前らどこまで関係進んでんの!?」
キリ「徹夜して何作ってんだよ…」
エル「ミンクさん…」
またここへ
戻って来たい…
そう
強く思った
第10話…/おわり
次号、新たな街で三人を
待っている出会いとは!?
甘い物が好きです。食後に無
性に食べたくなるけど、そう
いう時ほど満腹で…。<直志>